研究概要 |
高頻度ペ-シングにより作製した心不全犬において,心不全の進展過程と神経体液性因子の関係について主として心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の代償とその限界について検討した。 その結果、代償期心不全(軽症〜中等症)においては,ANPの上昇を応じたサイクリックグアノシンモノフォスフェイト(cGMP)の上昇を認めたこと、又、心不全代償期に1FANPの上昇に応じてANPのセカンドメッセンジャ-であるcGMP濃度が上昇したこと,さらにはこの時点までは,血漿レニン活性(PRA)血漿アルドステロン濃度(Ald)は経時的に低下し,ANPと逆相関した事より心不全代償期には,内因性ANPはレニン・アンギオテンシン系を抑制していることが明らかになった。ところが心不全が進展し,ANPが高値(>400pg/ml)となるにもかかわらず,cGMP濃度の上昇が止まりプラト-になる時期に一致して,PRA,Aldの上昇を認め体液,Naの貯留が増加し心不全は進展した。 以上の結果は,内因性ANPが実際にレニン・アンジオテンシン系を抑制することで心不全に代償的に働いている可能性を示す。この代償は持続的にANP高値の続く病態においてはcGMPがプラト-になる時期(ANP受容体のダウンレヴュレ-ションが疑われる)に一致して代償不全となり心不全は進展することが明らかになった。 又,ヒト慢性心不全患者の内因性ANPの代償とその限界についてもcGMPの肺での産生とANPの肺での代謝の関係が,重症心不全と軽症で異ること(重症ではANPの代謝の割にcGMPの産生は著明に低下している)から肺循環でのANP受容体のダウンレギュレ-ションの可能性が示唆された。
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