研究概要 |
1.重症心不全モデル犬において,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が上昇しこのANPは,血管拡張作用,利尿作用,レニン・アルドステロン系,交感神経系抑制に作用すると考えられてはいるが今まで実際どの程度内因性ANPがこのような代償作用を有するか明らかになっていなかった。今回,ANPの特異的阻外剤(HS-142-1)を用いて,血行動態指標や,ANPのセカンドメッセンジャーであるcGMP,レニン・アルドステロン,ノルエピネフリン等を測定した結果,重症状不全で上昇するANPの血管拡張作用は減弱していること。さらに血管拡張作用が減弱している状況下においても,レニン・アルドステロン系および交感神経系の抑制作用は認めることが明らかになった。 2.内因性ANPの代償作用に,急性心不全と慢性心不全において差異があることも明らかにした。つまり,急性心不全では上昇するANPに応じた生理作用を認めるが,慢性心不全ではANPが長期にわたり高値を呈した結果セカンドメッセンジャーであるcGMPの産生が明らかに低下し,受容体のdown-regulationが示唆された。実際に,慢性の重症心不全犬で測定した腎臓でのANP受容体数は減少していた。 3.1,2の結果を心不全モデル犬のみならず,心不全患者においても明らかにした。
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