研究概要 |
慢性心不全で上昇する内因性心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の代償機序は、軽症心不全では保持されているが、重症心不全患者では受容体のダウンレギュレーションにより減弱していることを心不全患者で明らかにした(1993.Circulation,87;70-75)。さらにANPの特異的拮抗薬を用いて、心不全イヌモデルにおいて実験的に同様の事実を証明した。又、心不全イヌモデルにおいてはANPの生理作用の中で、血管拡張作用は心不全の比較的早期から減弱するが、利尿作用、ナトリウム利尿作用は心不全が重症化するまである程度保持されていることも明らかになった。これらの事実は、近年内に保険適用になるANPの治療薬を臨床応用する上で重要な点と考えられる。 次に、心不全患者の治療薬としての血管拡張薬と薬物耐性の指標として、ANP濃度測定がnon-invasiveな指標として有用であることを明らかにした(Am Heart J,in press)。 最近明らかになった脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度も測定し、ANP濃度と比較したその結果、心不全患者において、BNPの方がANPに比しより重症度を反映して上昇すること、さらに心不全患者の予後の指標として、ANPよりもBNP濃度の方がより有用である可能性を報告した。又、血漿エンドセリン-1濃度が心不全患者において重症度、予後の指標として有用であること、さらには血中エンドセリン-1は主として肺で産生されることを明らかにした。
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