研究概要 |
今年度はCK-isoformの短時間・高分析システムの完成と、その臨床的検討を行った。分析には国産品の島津高速液体クロマトグラフLC-10Aシステムを用い、カラムにはAsahipak ES-502Nを用いた。基本的には筆者らがアメリカで行ったRapid Quantification System(Clin Chem 36:723,1990)と同様である。この結果、単一MM isoformの単一バンドとしての評価、分解能、分析時間(20分)とも満足のいく結果を得、このシステムが臨床的に充分応用可能であることを確認した。 さらにこれを一連の急性期冠動脈疾患患者に適用した。患者は急性期に冠動脈造影が可能で、冠動脈の閉塞、再潅流の確認できるものである。 PTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty)、あるいは血栓溶解療法という急性期治療により、再潅流が確認された患者15名と、再潅流の得られなかった10名について検討した。急性期に得た2本のMM_3isoformのデータから、毎分あたりの%MM_3の変化率を確認した。この結果、再潅流群の変化率(梗塞から初回採血までT=3.4時間)0.20±0.15、に対して非再潅流群(T=4.0時間)が-0.05±0.08と有意に再潅流群が高かった。故にこのシステムで%CK-MM_3の変化をみることにより、梗塞の重要な時期である5-6時間内に静脈投与であっても血栓溶解が成功したかどうかが判定され、次の治療方針決定に重要な示唆を与え得ることが判明した。また当初目標とした、冠動脈の再閉塞については、このシステム、あるいはCK-MM isoformによる診断は再潅流ほど容易では無いことが判り、この目的のためには、他の指標を参考にすベきだと考えられた。
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