研究概要 |
今年度に予定していた実験について以下の結果を得た。 1.セロトニン線維に対するFluoxetineの再生効果について大脳皮質の両側対称部位に、5,7-dihydroxytryptamine(2μg/0.5μl)を局所注入し局所のセロトニン線維を変性させておく。1-2週間後に、その同部位の一側に Fluoxetineを、他側に生食を浸透圧ミニポンプを用いて2週間以上注入した。その後、セロトニン抗体による免疫組織化学的方法を用いて、皮質のセロトニン線維の再生の有無を顕微鏡下で観察した。その結果、Flouxetineがセロトニン線維の再生を起こすという明かな結果は得られなかった。 2.全身投与による実験 抗うつ薬の全身投与による再生効果を検討するために、ノルアドレナリン線維の選択的毒素であるDSP4を腹腔内投与(50mg/kg)し、皮質のノルアドレナリン線維を変性させた。この段階で、DSP4によるノルアドレナリン線維の変性効果を確認するために電気生理学的実験をした。その結果、多くの例において変性を認めたが一部の動物ではまったく変性を確認できなかった。この理由として、DSP4の腹腔内投与がうまくいってなかったことが考えられる。従って、この実験はこの段階で中断している。 今年度の実施計画にないが、本研究に関連し以下の実験を行った。 抗うつ薬によるノルアドレナリン線維の再生機序にβ-receptorが関与するかどうかを検討した。方法としては、上記1と同様にまず皮質の両側対称部位に6-ヒドロキシドーパミンを注入しノルアドレナリン線維を変性させる。その後、一側の同一部位にdesipramineを、他側にdesipramineとβ-blockerのpropranololを浸透圧ミニポンプで2週間以上注入した。ノルアドレナリン線維の再生に対するpropranololの効果は、dopamine-β-hydroxylaseの抗体を用いた免疫組織化学的方法で確認した。その結果、propranololはdesipramineの効果を弱める作用がある事がわかった。この事は、抗うつ薬によるノルアドレナリン線維の再生機序の少なくとも一部にはβ-receptorが関与している事を示唆する。
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