今回われわれは精神分裂病における自己免疫疾患的な要素の関与する可能性を検討するために、ある種の自己免疫疾患患者の血清中で上昇することの知られているILー6の血清中濃度を慢性期の精神分裂病患者で測定した。 対象者は、DSMーIII(5)に基づいて精神分裂病と診断された入院中の患者90人(うち男性60人)と、精神科的疾患の既往および現症のない健常成人90人(うち男性60人)である。いずれも、身体疾患、特に炎症性疾患を有していなかった。全対象者に研究意義を十分に説明し、同意を得た上で10mlの採血を行なった。血液を2時間以内に遠心分離し、血清だけを採取、ILー6を測定するまで-40℃で保存した。また、全対象者に対して、採血の時点での末梢血白血球数と白血球分画、血清CRP値、血清IgG値を調べた。血清ILー6はサンドイッチ法によるELISAを使って測定した。なお、各サンプルはデユプリケ-トで測定し、平均値をもってその値とした。このELISAではILー6の測定限界は3.9pg/mlで、ILー6以外のサイトカインは検出されなかった(結果は省略)。 全対象者において同時に測定された血清CRP値、血清IgG値、白血球数およびその分画は正常範囲内であったにもかかわらず、8人の精神分裂病者が血清ILー6の明らかな高値を示した。これら8人の患者における病型、罹病期間、薬物投与量、家族歴、既往歴には特徴的な所見はなかった。このことは、精神分裂病患者の一部に、何んらかの免疫学的な異常が存在することを意味する。
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