研究概要 |
本研究は精神分裂病の病因を解明することを目的とするが,特に病因として自己免疫疾患的要因を仮定し,その検証を試みるものである。研究対象として,インターロイキン6を対象とした。インターロイキン6はインターロイキン1などとともに炎症のメディエイターとして研究されている。また,慢性関節リマウチなどの自己免疫疾患で産生が増加することが知られており,自己免疫疾患の要因としても注目されている。 我々は,90人の精神分裂病患者の血中インターロイキン6のレベルを調べ,そのうち約10%の患者でその値が上昇していることを見いだした。対照として90人の健康人について血中インターロイキン6のレベルを調べたが,両群間に統計学的な有意差がみられた(p<0.05)。血中インターロイキン6のレベルの異常と,精神分裂病の治療薬(量および種類),罹病期間,類型との関連性はみられなかった。これらの結果はLife Science 49:661-664,1991に報告した。またインターロイキンの中枢神経機能の修飾作用を調べた。ラット前視床下部にインターロイキン1βを注入し(1ng),同部位で回収されたモノアミンレベルを測定した。その結果,インターロイキン1βは同部位において,ノルエピネフリン,ドーパミン,セロトニンの放出を促進することがわかった。しかもこの作用は,従来言われてきたプロスタグランディン生産を介さずに起こるものであることが判明した。今後はさらに細かくこのインターロイキンの中枢薬理作用機序を調べていく予定である。
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