研究概要 |
昨年度までの研究により,精神分裂病で血中インターロイキン6のレベルが高値であることを見いだした。本年度は中枢神経系におけるインターロイキンの作用を明らかにする目的で基礎的な実験を行った。その結果,マイクロダイアリシスとHPLCシステムを使った実験によって、ラット視床下部へのインターロイキン-1bの直接投与が、同部位におけるモノアミン伝達物質の放出にいかなる影響を及ぼすかを調べた。 方法 マイクロダイアリシスの方法について簡単に説明する。 8-9週齢のSD雄性ラットに、ダイアリシスプローブを挿入するためのガイド管を視床下部に設置する手術を定位的に行なった(bregmaより後方-1.5mm、側方-0.9mm、深さ7mm)。実験の前日に、透析膜長2mmのマイクロインジェクションチューブ付きダイアリシスプローブを視床下部に挿入し、マイクロダイアリシスを行なうケースの中で飼育を継続した。実験の当日に、透析液(ハンクス液)を流速毎分2mlで流し、十分な安定化が得られたところで、サンプリングを開始した。1サンプルの回収時間は20分間とし、得られた透析液は、0.04N酢酸水溶液を含むサンプリングチューブに4℃のもとで回収した。 結果と考察 ラット視床下部内に直接投与した際インターロイキン-1bは、ノルエピネフリン、セロトニン、ドーパミンとそれぞれの代謝物のレベルを増加した。このノルエピネフリンの増加はデキサメサゾンあるいはインドメタシン前処置群においても同様に観察された。 拘束ストレス負荷時に、ラット視床下部で、インターロイキン-1bが産生され、同部位でCRFあるいはプロスタグランジンの作用を介さない機構によりモノアミン伝達物質を動員することが示唆された。ストレス応答としてのHPA軸の賦活化にインターロイキン-1bが直接関与していることが強く示唆された。
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