研究概要 |
自家腸管遊離移植による食道再建術では犬モデルの長期生存例を得てこれら長期生存例の食道機能の検討に至った。特に術後食道機能が良好であったと考えられた犬モデルは食道内圧検査では機能不全例との比較において明かな差はでなかった。しかし,X線透視ビデオによる解析では経過がよいものは移植腸管の上下食道と協調した運動が得られることが判明し,全身麻酔下での検査ではあるが本法の有用性が示唆された。第29回日本小児外科学会「自家腸管遊離移植による食道再建術ー犬モデル長期生存例の検討ー」で口頭発表した。 導電性ゴムチューブの電気抵抗を応用したstrain gageを試作した。測定ではstrain gageで腸管壁の変位の大きさ,すなわち移植腸管の運動の大きさの評価や,上下食道との運動の差異を捉えることはできなかった。また,導電性ゴムチューブとstrain gageの固定のため絶縁を兼ねてシリコンを用いてコーティングしたが,このことがstrain gageの特性を変化させることにもなり測定の煩雑さを招くこと,腸管に直接縫合固定することによる侵襲が極めて大きいことが判った。実際strain gageを縫着した部位の損傷から,感染,死亡したモデルもあった。 これらの経験からstrain gageを他の材料で作成することは検討中であるが,さらに非侵襲的な検査法による経時的な計測が消化管の機能測定法としてやはり有用であると考えられた。現在は測定部としてバルーンを用いそれを食道内に挿入し,いわゆる食道内容物として機能させ,ニューラルネットワークによりその形状,内圧変化の測定,制御を行う方法を検討している。本法はバルーン自体が食物の代わりをすることからより生理的な食道運動を捉えられるものと考えられるが,研究としてはまだ基礎的段階である。
|