本研究の主たる目的は遊離腸管移植による小児食道再建術の確立ならびその代用食道としての機能を検討することにある。基礎実験より腸管の阻血時間の限界を2時間として、食道再建術を施行してきた。その結果、遊離腸管移植による頚部食道再建及び胸部食道再建術も阻血時間は120〜140分とほぼ限界時間内に抑えられるようになった。 臨床応用のためには移植腸管を含めた食道機能の検討が必要である。食道機能評価は食道造影、食道内圧検査で行われているが動物実験では麻酔下に施行しなければならず、食道機能の重要な因子である嚥下運動は捉えることはできない。臨床的には嚥下障害がなく全く無症状でもこれらの検査で異常が見つかることもあり、一方、検査で異常がなくても臨床症状が不良の例もある。犬モデルの長期生存例を用いた検討を行ってきたが、特に透視ビデオ像から臨床経過が良好な例では移植腸管が上下食道とほぼ同様の運動をする知見が得られ第11回日本小児マイクロサージャリー研究会(1991年11月)と第29回日本小児外科学会(1992年6月)において報告した。strain gageは食道造影や食道内圧検査と異なり無麻酔下で施行できる可能性がある。従来の方法と新たに導電性ゴムチューブによるstrain gageの2種類を検討したが、嚥下運動に伴うと思われる移植腸管の圧変化を捉えられたが、それがどの様に食道運動を反映しているかを解明するに至っていない。また、これらは直接体内に埋め込むため、組織の損傷、感染などを来たし反復して施行できる検査でないことも問題となった。現在は測定部としてバルーンを用いそれを食道内に挿入し、いわゆる食道内容物として機能させ、ニュートラルネットワークによりその形状、内圧変化の測定、制御を行う方法を検討している。本法はバルーン自体が食物の代わりをすることからより生理的な食道運動を捉えられるものと考えられる。
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