研究概要 |
我々は、これまで経時的に移植小腸の生検が容易に施行できるイヌ同種小腸移植モデルを作製し cyclosporin (CYA), FK506 (FK)による拒絶反応抑制効果を検討してきた。今回は、作用機序の異なる新しい免疫抑制剤RS-61443 (RS) 併用による拒絶反応抑制効果を検討した。 [方法]ビーグル犬をレシピエント、雑種成犬をドナーに用いた。小腸亜全摘群(I)、移植群[無治療群 (II),CYA+FK群 (III),RS群 (IV),CYA+FK+RS-約30日間投与群 (V)]を作成した。免疫抑制剤の投与量及び経路は、併用あるいは単独投与に関係なく CYA 5mg/kg/day im., FK 0.05mg/kg im., RS 20mg/kg po.とした。移植後2日目迄は水分のみ、6日目迄は流動食を自由に摂取させ、7日目より通常食を摂取させた。[結果]I群;約50%の体重減少を伴い27,30,54日でそれぞれ死亡した。II群;移植腸管の腫脹が著しく、腹膜炎を併発しており、median survival time(MST)8日であった。(n=6,5〜17日)。組織学的にも強い細胞浸潤が見られた。III群;MST 28日(n=5,21〜70日)と生着延長が認められたが、40〜50%の体重減少がみられた。組織学的には中〜高程度の拒絶反応の所見が見られた。IV群;2例に行なわれ、生存日数はそれぞれ 8,20日であり、20日生存症例は約50%の体重減少が見られた。V群;MST 35日 (n=4, 23,〜68日)であり、免疫抑制剤投与中は軟〜普通便を呈し体重減少も緩徐〜中程度であった。組織学的にも、細胞浸潤が抑えられており急性拒絶反応がコントロールされているものと考えられた。[結語]イヌ同種小腸移植モデルを用いて CYA,FK,RSによる拒絶反応抑制効果を検討した。副作用を軽減させる目的で、これら 3剤を併用すると、 RSによる相加性効果が得られ、移植小腸の機能発現も示唆された。
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