本年度は、実験モデルの設計、実験モデルの作成、実験モデルの基礎実験と、研究を3段階に分けて実施の予定であった。しかし、実験モデルの設計は終了したものの、実験モデル作成の過程で時間を費やしてしまい、現段階では実験モデルの完成に至っていない。 実験モデルの設計で創意を要したのは以下の点である。(1)平均160cmの生体を想定して、ポンプの静止状態で静脈圧測定部分に80mmHgの重力がかかるように調整するため、流出系の高さを100cmから200cmで上下方向に移動できるようにする。(2)静脈径は中枢から末梢とへ小さくなるが、臨床デ-タを参考にシリコンチュ-ブは表在静脈5mm、深部10mmに統一する。(3)生体の静脈弁は2尖弁であるが、この実験では狭窄部を円盤が閉鎖する形式の一方向弁を採用する。静脈弁の部位はポンプの前後、並びに分枝合流部位の組み込む。(4)ポンプとして一方向弁付きのゴム送気球(径10cm)を使用する。(5)ポンプへの流入系として、ポンプ内を流体(水)が充満する時間を20秒以上にするため、末梢静脈からのリザ-バ-の他、動脈(水道)からの流入を調整できる狭窄を作成する。 実験モデルの作成は、(1)(2)(3)を終了した。この実験目的から、表在静脈と深部静脈との関係はあまり重要でないので、1本の大伏在静脈に相当する静脈の作成にとどめた。その後、深大腿静脈からの流入が浅大腿静脈を移植部位とする場合の欠点となる可能性を評価するため、浅大腿静脈近位部に深大腿静脈の合流部を作成して末梢からとは異なる流入路を作成中である。また、ポンプの本体である一方向弁付きのゴム送気球(径10cm)の大きさ、性状、装着部位などを検討中である。 まとめ:1.実験モデルの設計は終了した。2.実験モデルは現在作成中であり、ポンプ部分の問題が解決すれば完成する。3.平成4年度には基礎実験や本実験が可能である。
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