四塩化炭素(以下CC14)肝障害ラットに門脈下大脈派シャント術(以下シォント術)を施行した群(A群)、CC14肝障害ラットに単開腹術を施行した群(B群)、正常肝ラットにシャント術を施行した群(C群)、正常肝ラットに単開腹術を施行した群(D群)に分けて検討を行った。 右室収縮期圧(以下RVSP)はA、B、C群はD群に比較して有意に高く、CC14肝障害作製およびシャント術によりRVSPは上昇すると考えられた。又A、B群はC群に比較して有意に高く、シャント作製よりもCC14肝障害作製の方が有意にRVSPは上昇すると考えられた。 肺の病理学的検討では、A、B、C群とも肺の小動脈の中膜および内膜の肥厚を認めた。又その程度はA群、B群、C群の順に高度であった。 以上よりCC14肝障害作製およびシャント術により血行動態的におよび器質的に肺高血圧症類似病変が惹起された。 門脈下大静脈シャント率(以下S率)はA、B、C群はD群に比較して有意に高く、CC14肝障害作製およびシャント術によりS率は有意に上昇すると考えられた。又A、C群はB群に比較して有意に高値を示し、CC14肝障害作製よりシャント術の方が有意にS率は上昇すると考えられ、各群間のRVSPおよび肺の病理学的変化の差異とは一致しなかった。 右室血中Endotoxin(以下Et)はA、C群はB、D群に比較して有意な高値を認めた。つまりシャント術施行によりEtは有意に上昇すると考えられたが、S率と同様に各群間のRVSPおよび肺の病理学的変化の差異とは一致しなかった。 以上よりシャント術施行群(B群)においてはS率およびEtが肺病変の程度と関連がある可能性があるが、肺障害群においては肺病変はS率およびEtとの関連を認めず、肝備害時における肺高血圧症類似病変はシャント作製時と別の機序が関与している可能性が見いだされた。
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