研究概要 |
1.ヒト食道癌由来培養細胞株の血管内皮細胞への接着性を評価するために、ヒト大網組織よりトリプシン処理により微小血管内皮細胞を分離する試みを行ったが、初代培養中に増殖した線維芽細胞の分離は困難であり、また血管内皮細胞の増殖は不良で、これを接着実験に供するほどの数に増やすことはできなかった。 2.ヒト食道癌由来扁平上皮細胞株5株について、細胞接着に関係する細胞表面のタンパク抗原の発現量を評価するために、それらに対するモノクローナル抗体を用いてFACS解析を行った。解析を行った表面抗原はCD11a,CD11b,CD13,CD15,CD18,CD40,CD44,CD54,CD56,CD58である。その結果、解析を行った細胞株のうち、ヌードマウス足蹠皮下移植時に局所リンパ節に転移するEsC-1-K,S,M株(転移率60%,80%,40%)と転移しないEsC-2株およびEsC-3株(転移率:いずれも0%)との間に細胞表面抗原の発現量に有意差は認められなかった。 3.長時間維持している間にエストロゲンレセプターが陰性化したヒト食道癌培養細胞株ES-25Cを、エストラジオール(以下E_2)を10^<-12>Mの濃度で含む培養液で4代継代したのち、E_2の有無による細胞増殖の違いを細胞数とフローサイトメトリーによるS期細胞の割合で比較した。その結果、E_2添加群では無添加群に比べて細胞増殖は抑制された。また、E_2を10^<-12>Mの濃度で含む培養液で20代継代した細胞のエストロゲンレセプターを測定したが、陰性のままでありレセプターの再発現は見られなかった。 4.ES-25Cに0.01-100ng/mlのEGFを添加して増殖への影響をみた。その結果、100ng/mlの濃度のEGFで増殖が促進された。次にエストロゲンとの併用効果をみるために、1および100ng/mlのEGFに10^<-12>MのE_2を添加して増殖への影響をみたが、E_2の有無で増殖に違いはなかった。
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