研究概要 |
食道癌由来細胞株(HPL-E_SC-1-K,-Sおよび-M)2-8×10^6個をマウスの右後肢足蹠皮下に注入して、局所腫瘤の成長を経時的に計測し、一定期日後に屠殺、局所腫瘤および膝窩部リンパ節を病理組織学的に検索した。リンパ節転移の癌侵襲度をI-III段階に分類し、癌侵襲が輸入リンパ管内に限局しているものを0段階としてこれに加えた。局所腫瘍生着後の足部切断実験によって、リンパ節転移成立までに4週間程度の準備期間が必要であり、進展した転移巣もそれ以降に認められることがわかった。リンパ節転移率は移植腫瘍の量や宿主の性差に関係なく、またNK細胞活性を抑制するといわれる抗アシアロGM1抗体処理は腫瘍生着率を向上させたが、リンパ節転移には影響を及ぼさなかった。 ヌードマウス皮下移植時にリンパ節転移を起こすHPL-EsC-1-K,-Sおよび-M(K:60%,S:80%,M:40%)とリンパ節転移を起こさないHPL-EsC-2およびHPL-EsC-3を用いてfibronectin(FN)5μg/cm^2,laminin(LN)2.5μg/cm^2およびtypIVcollagen(COIV)2.5μg/cm^2でコーティングしたプラスティックシャーレに対する接着性を検討した。その結果HPL-EsC-1は接着細胞数と転移率との間に相関がみられた。HPL-EsC-2はCOIV以外の接着分子には接着性を示さなかったが、HPL-EsC-3はいずれの接着分子に対しても高度の接着性を示しており、リンパ節転移性との間に不一致がみられた。 各腫接着分子に対するモノクローナル抗体を用いてこれらの細胞における坑原の表現をフローサイトメトリーで解折した。その結果抗原の発現量とリンパ節転移性との間に相関を認めるものはなかった。 その他、食道癌培養細胞株1株およびヌードマウス移植食道癌3株を用いて上皮性増殖因子(EGF)とエストロゲンの腫瘍増殖への関与を検討したが、明らかな関連は認めなかった。
|