研究課題
一般研究(C)
近年肺癌をはじめとする様々な人の腫瘍において、癌抑制遺伝子であるP53の遺伝子異常を高頻度に認めることが報告されてきている。そこで我々は肺癌におけるp53遺伝子異常を簡便で特異性の高い検査法であるPCR-SSCP(Polymerase Chain Reaction-Single Strand Conformation Polymerphism)法を用いて検索し、さらにその臨床病理学的意義をも含めて検討した。DNAを抽出する腫瘍組識は、東京医科大学病院で外科的に切除された原発性肺癌症例45例より得た。他臓器の腫瘍ではp53の遺伝子異常の98%がエクソン5からエクソン8の間に集中しているため、今回の検索でも上記領域を目標とし、この領域をはさみこむようなオリゴヌクレオチドプライマーを作製した。p53遺伝子のPCR-SSCP法による解析の結果、45例中15例、33%の肺癌症例で異常な移動度を示すbandが検出され、その遺伝子異常が指摘された。組織型別にみると遺伝子異常の頻度は様々であったが、特に腺癌では病理病期が進行するにともなってp53の遺伝子異常の頻度が増す傾向にあることが判明した。この事実はp53の遺伝子異常が肺癌の進展過程において重要な役割を果たしていることを示唆するものであり、肺腺癌の予後を推測する重要な因子であると考えられる。したがってp53の遺伝子異常を認める症例は厳重な経過観察が必要と考えられる。しかし、今回の原発性肺癌症例45例の切除標本の検索ではp53の遺伝子異常の頻度は33%と高くなく、現状では肺癌の遺伝子診断として用いるにはさらに検討が必要と考えられる。
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