研究概要 |
交互配列静磁場の動脈内皮細胞再生促進能を検討した。〔方法〕16頭の雑種成犬の両側頸動脈(N=32)を用い,頸動脈の末梢側に作成した穿通孔から剥離子を挿入し,長さ5cmにわたって合計6回血管内腔を擦過し,内皮細胞を剥離した.一側の頸動脈を静磁場プラスチックフィルム(0.2μの多数の微小磁性体が交互かつ多層に配列,垂直磁場は平均約250ガウス)で巻き(実験群:N=20),他側はそのままとした(対照群:N=12).内皮損傷後1,2,4,5,6,8週後に頸動脈を摘出し,光顕(HE染色,フォンヴィルブランド因子染色)および走査電顕にて動脈内腔を観察した.各検体の内皮損傷部分両端から1cmの部分を近位部および遠位部とし,それぞれ1cm離した中央部1cmの部分を中央部とし,部位別の内皮の再生状態を検討した.〔結果〕a.損傷直後(N=2):損傷を加えた直後の内皮が全面にわたって完全に剥離していることを確認した。b.1週後:対照群(N=2)および実験群(N=4)ともに,内皮細胞の再生は損傷部分の両端近傍に認められ,有意差は認められなかった.c.2週後:対象群(N=2)では内皮の再生所見は近位および遠位部の一部にとどまっていたが,実験群(N=4)では近位部および遠位部ばかりでなく中央部にまで内皮の再生は及んでいた.d.4週後:対照群(N=2)の中央部にも内皮の再生が認められ,実験群(N=2)との差は有意でなくなった.5,6,8週後も同様の所見が認められた.【結論,考察】実験群のほうが対照群よりも内皮細胞の再生速度が速く,術後2週でその差が明らかとなった.機序の詳細は不明であるが,血液中の陰性荷電粒子が交互に配列した静磁場を通過する際に,磁場の変化を生じ,局所の起電力の変化を生じさせることになる.これが内皮細胞の増殖促進させるのではないかと考えている。
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