研究概要 |
1)実験1…雑種成犬の両側頸動脈および大腿動脈の4本を使用.air‐dry法によって内皮を約4cmにわたって傷害した後,250ガウス(M1と略す)と350ガウス(M2)の2種類の交互配列静磁場フイルムと2枚の非磁化フイルム(M0)の合計4枚をそれぞれの損傷動脈に巻き、磁場の影響を比較検討した. a)血小板凝集への影響:術後1日,4日時点の摘出標本を走査電顕で検討したところ,血小板凝集や血栓付着状況はM1,M2がM0より少ない傾向が認められた. b)血小板放出因子への影響:術前と術後2週の比較では,血小板数,β-トロンボグロブリン,血小板第4因子,トロンボキサンB_2には有意差は認められなかった. c)内皮再生:術後2週時の内皮再生はM1,M2のほうがM0より多い傾向が認められたが,M1とM2の差は明確でなかった。 2)実験2…雑種成犬の胸部下行大動脈を10mm woven Dacron人工血管にて約7cmにわたって置換し,人工血管の周囲にM1を巻いた群とM0を巻いた群で比較検討した. a)血液生化学データ:術前後,4日後,7日後,11日後,14日後に測定.総タンパク,GOT,GPT,尿素窒素,クレアチニン,電解質,プロトロンビン時間は,M1群では正常範囲内にとどまっていた.M1,M0群とも術後,フイブリノーゲンとFDPは上昇したが,術後7,11日目にはM1群のほうがM0群より有意に低値となった.また,術後14日目のアンチトロンビンIII活性もM0群より高値となった. b)内皮再生:術後2週時の内皮再生範囲はM1とM0では明確な差は認められなかった. 3)実験3…実験1と同様の手法を用い,3種類の異なった配向を有す静磁場リングと磁場のないリング内に損傷動脈を通し,内皮再生と動脈壁中のDNA濃度などを比較検討中である.結論 交互配列静磁場は内皮再生促進作用,血小板凝集抑制作用,凝固活性抑制作用を有することが示唆され,一般血液生化学データにも悪影響のないことがわかった.
|