研究概要 |
1)交互配列静磁場が血管内皮細胞および血管平滑筋へ与える影響を検討した。雑種成犬の頚動脈および大腿動脈を用い,aira-dry法にて内皮傷害を作成した。{実験1}縞状にN,S極が配列した磁化シートを2種類(磁場の強さは280と360ガウス)使用し,内皮傷害の長さを40mmとした。この磁化シートの血管への充て方で磁場の配向による影響をみた。即ち,磁場の配向が血管長軸方向と平行,あるいは垂直方向となるように充てた。対照として非磁化シートを使用した。{実験2}3種類の異なった配向を有するリング状マグネット(内径6mm,外径8mm,幅3.5mm)を作成し,磁場の配向の相違による影響を検討した。リング内に血管を通した時の血流方向をZ軸とし,血流に直交あする平面をXY平面とすると,No.1のリングはZ軸方向に着磁,No.2はXY平面に水平に方向に着磁(円周上にS,N極が1極ずつ,合計2極配列),No.3はXY平面方向円周上に10極着磁させた。対照として同質の非磁化リングを使用した。内皮傷害の長さは17.5mmとした。{結果}実験1では,有意差を認めなかったものの,マグネット群が対照群より内皮の再生が良好であった。磁場の配向による影響にも有意差を認めなかったが,S,N極が血管円周上に配列している群のほうが,S,N極が血管の長軸方向に配列している群より,内皮の再生が良好であった。実験2 ではNo.1群は対照群とNo.3群に比して有意に内皮再生が良好であった。有意差を認めなかったが,他のマグネット群も対照群より内皮の再生が良好であった。組織DNA濃度はマグネット群が対照群より少ない傾向にあった。これは,マグネット群の内皮再生が速いため,平滑筋の増殖が抑制された結果と考えられた。2)交互配列静磁場人工血管の開発およびその評価は一般研究B(研究代表者:阿部正紀,東京工業大学))で検討中である。
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