研究概要 |
整形外科の分野において骨移植は骨格機能再建のための最も重要な手段のひとつであるが,その多くは自家骨移植として行われてきた。しかし,大量の移植骨を必要とするときには量的な制約を免れ得ない。また,同種骨移植は法的,社会的に問題があり採取が困難である。 異種骨を移植しようとする試みは従来より主に実験的に行われてきたが,その強い抗原性のために必ずしも良好な結果は得られていない。一方,強力な免疫抑制効果を有するといわれるFK506(FK)は他の臓器移植の分野では大いに注目されている。今回,我々はこのFKを用いて異種骨を中心とした骨形成の研究を行うとともに,FKの骨形成,骨代謝に及ぼす影響について検討した。 実験用動物(家兎,ラット)を用い移植実験を行った。即ち,ラットの腸骨を家兎背筋肉,腸骨内に移植し,異種骨移植とし,これと対照にするために自家骨移植群も作成した。またラットの腹部皮膚を家兎背部に移植した。それぞれの群にFK投与群,非投与群を設け骨移植については組織学的に検討し,皮膚移植については移植片の生着日数をみることで免疫抑制効果を判定した。 FK投与群では異種骨移植であっても筋肉内においてリンパ球の侵潤は著明に抑えられ骨形成を認めた。自家骨移植においても骨形成は障害なく認められた。腸骨内移植ではFKを投与すると異種骨であっても再生血行を認め,添加骨形成を移植骨骨梁に認めた。また,皮膚移植ではFKを投与するとその投与量に応じて生着日数の延長を認めた。
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