研究概要 |
*研究による新たな知見・成果 1.卵巣腫瘍組織に特異的な糖脂質の分析 卵巣悪性腫瘍において、粘液性腺癌では以下の4つの特徴的パタ-ンの存在が明らかにされた。1)酸性糖脂質の90%以上が硫酸化糖脂質(Sulfatide)。(他の組織型はガングリオシドが大部分を占める。) 2)Sulfatideはセラミド部分にNーcerebronyl phytoーsphingosineを含むGal Cerが高濃度。3)中性糖脂質についてもセラミド部分に同様にNーcerebronyl phytosphingosineを含むGal Cerが高濃度。4)血液型物質についてはLe^h、Le^bが正常及び他の組織型に比較し多く発現。 2.癌化に伴う糖転移酵素の変化の解析 GAT(癌関連galactosyl transferase)を抗原として作製したモノクロ-ナル抗体を用いたEIAキットにより卵巣癌患者血清中のGAT量を測定した結果、比較的高い陽性率が得られ、GATが卵巣癌の特異性の高いマ-カ-になり得る可能性が示唆された。その後の我々のグル-プによるGATのcDNAを用いた分子生物学的な検索の結果、GATは膜に結合したGTの一部が可溶型として血中に放出される過程での分解酵素による切断異常により血中に出現したものと推測された。 *今後の研究の展開 粘液性腺腫においてsulfatideが増量する結果より,GATと同様に硫酸基転移酵素(sulfoーtransferase)活性の上昇が予想される。又、sulfatideはラミニンと結合し、癌細胞の浸潤・転移・増殖と関係があることが報告されている。そこで、代謝に直接関与するsulfoーtransferaseの活性を患者血清・組織(摘出組織・培養細胞)について測定し、卵巣腫瘍の癌化に伴う糖代謝異常の本質を探り,結果として組織型及び臨床における予後の診断に役立つかどうかを検討する。
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