研究概要 |
近年骨芽細胞にエストロゲンに対するレセプタ-が発見され,エストロゲンはinsulinーlike growth factor(IGF)やtransforming growth factorーβの産生を促し,骨形成を促進する一方,前破骨細胞から破骨細胞への変換を抑制し骨吸収を抑制することが報告されている。また,interleukin(IL)ー1やtumor necrosis factor(TNF)ーαが骨吸収を促進するとされる。そこでわれわれは閉経後骨粗鬆症の病態を解明する目的でCa調節ホルモンやサイトカインなどを測定した。 20代から80代の健常女子骨粗鬆症患者を対象とした。第3腰椎の骨量をQCT法により測定した。骨代謝の指標として血中intact PTH,PTHーM,カルシトニン(CT),1,25,(OH)_2D24,25(OH)_2D,25ーOHDおよび骨グラ蛋白(BGP)を測定した。サイトカインとして,末梢血マクロファ-ジのILー1βおよびTNFーαの産生能を測定した。さらにIGFーIおよびIGFーIIも測定した。その結果QCTによる。 骨量は加齢により減少することを認めた。血中PTHは閉経後も正常ないし増加し、骨粗鬆症患者と有意差を認めなかった。骨粗鬆症患者において,血中CTは正であり,1,25(OH)_2Dは高度の骨粗鬆症で減少した。血中24,25(OH)_2Dや25ーOHDも減少した。ILー1β産生能やTNFーα産生能は閉経後増加傾向にあり,骨粗鬆症患者で増加した。血中IGFーI/IIと骨量との間に有意の正相関をみとめた。 以上のことから骨粗鬆症ではILー1βやTNFーαなどのサイトカインが増加している。エストロゲンは少なくともIGFーI/IIを介して骨量の保持に重要な役割を演ずるものと思われた。
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