研究概要 |
細胞膜に化学的に小孔を生ぜしめ,細胞外から細胞内環境を自由に操れるskinnedーfiberの作製にsaponinが従来より有効とされてきた。sapーon inを用いたskinnedーfiverでは,標本の薬物投与による消耗のために数度にわたる薬物投与の実験は不可能であり,標本をそのたびに変える不備があった。最近,βーessinを用いたskinnedーfiberの実験が他臓器にて行われ,ヒト子宮筋に適用したところskinningの調節性に優れ薬物投与による再現性を有することがわかった。そこで以降のskinningはβーescinにて行った。1990年,我々はヒト子宮筋における単位断面積あたりの張力と収縮蛋白のCa^<2+>感受性は妊娠の進行に伴って増加することを報告し,その理由は妊娠の進行に伴うcalmodulinの増加と考えた。そこで今回,患者の同意を得て手術時に採取した非妊娠子宮(子宮筋腫等)と妊娠子宮(帝王切開時)から微小筋肉切片のskinnedーfiberを作製し細胞内にcalmodulinを投与し,その効果を検討した。非妊娠子宮と妊娠子宮の双方でcalmodulinにより収縮蛋白のCa^<2+>感受性は増加したが,張力の増加は軽微であった。しかしながら,calmodulinは子宮筋の妊娠性変化に貢献することが示唆された。非妊娠子宮にcalmodulinを投与することで,妊娠子宮のCa^<2+>感受性や張力の増大を再現しようと試みたが,濃度の限界もあり再現は困難であった。妊娠時に増加するestrogenやprogestーeronの作用も妊娠末期の収縮蛋白の変化に必要であろうと思われる。 最近,血管内皮由来の収縮物質と弛緩物質についての研究が多い。〓血管についても例外ではない。しかし現在のところ〓動静脈について内皮由来弛緩物質の生理的意義については否定的な報告が多い。妊娠時期との関連でこの問題についての研究に最近関心があり,将来陣痛との関連を検討する予定である。
|