C3Hマウスの胎仔から採取した下顎第一臼歯歯胚から分離した上皮成分と間葉成分との再結合体を同系マウスの腎被膜下に移植する実験系を用いて実験を行い以下の結果を得た。 1.胎齢17日マウスの臼歯歯胚(帽状期後期)から得た歯堤(上皮成分)と歯乳頭(間葉成分)とを再結合することによって、角化重層扁平上皮で被覆された嚢胞を生じせしめヒトの歯原性角化嚢胞の実験モデルを作成した。 2.胎齢17日マウスの1個の臼歯歯胚(帽状期後期)から得たエナメル器(上皮成分)と歯乳頭(間葉成分)を各々1単位とし、これらを種々の比率で組み合わせた再結合集合体とすることによって、いずれの組み合せからも互いに独立した複数の歯牙様硬組織を生じせしめることに成功した。これらはヒトの集合性歯牙腫に相同のもので、あわせて、過剰歯、融合歯、歯の発育異常に対応し得る病変の実験モデルを作成できたものと考えている。 3.胎齢18.5日マウスの1個の臼歯歯胚(鐘状期初期)から得たエナメル器(上皮成分)と歯乳頭(間葉成分)を各々1単位とし、これらを種々の比率で組み合わせた再結合集合体とすることによって、いずれの組み合せからも互いに複雑に融合し一塊となった硬組織塊を生じせしめることに成功した。これらは不規則な形状の象牙質塊とこれらの一部を覆うように介在するエナメル質とからなるものでヒトの複雑性歯牙腫と相同の病変の実験モデルが作成できたものと考えている。 4.現在、異なる発生段階にある歯胚の上皮成分と間葉成分との組み合わせによる再結合体からえられる病変を検討中であるが、ヒトのエナメル上皮腫に対応し得る病変は未だ得られていない。 5.各種成長因子の発現状況についても検索中である。
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