研究概要 |
本研究は細胞の分化・成長に伴う薬物受容体を介する情報伝達機構の動態とその機序を解明する目的で,耳下腺におけるβーアドレナリン受容体ーアデニル酸シクラ-ゼ系の情報伝達機構とその共役因子であるGTP結合蛋白質(G蛋白質)の生後変化を耳下腺細胞の刺激に対する応答であるアミラ-ゼ分泌との関連において追究するものであり,本年度は下記の成果を得た. 各週齢のラットより調製した耳下腺切片をイソプロテレノ-ル(IPR)で刺激するとアミラ-ゼ分泌に対するIPRのEC_<50>値はラットの成熟に伴って低下し,耳下腺のβー作動薬に対する感受性が加齢とともに上昇することが示された.これらの結果はラットの成熟とともに[ ^3H]ジヒドロアルプレノロ-ルのラット耳下腺細胞膜に対する特異的結合のBmax値が上昇し,この特異的結合に対するIPRのIC_<50>値が低下するとの,すでに報告した私達の実験結果とよい対応を示していた.一方,上記切片をフォルスコリン(F)で刺激すると,著しいアミラ-ゼ分泌が惹起されたが,この反応性は幼若ラットにおいて最も強く,加齢とともに低下した. 各週齢のラットより得た耳下腺細胞膜への[ ^<35>S]GTPγSの結合実験を行って,G蛋白質の生後変化を調べたところ,Bmax値,Kd値はもとに生後急激に上昇して4から8週齢の間でピ-クとなり,以後2年齢まで徐々に低下した.さらに,百日咳毒素あるいはコレラ毒素で処理した耳下腺細胞膜を用いた実験結果からGsあるいはGi蛋白質とGTPとの結合能は無処理膜の場合と同じ生後動態を示した. 以上の結果から,耳下腺のβー受容体刺激に対する反応性の生後変化はβー受容体の生後の動態を反映しており,Gsの出現とその後の変化を示しているものと考えられた.また,Fに対する耳下腺の反応性の生後変化はGiの出現を示しているものと考えられた.
|