研究概要 |
歯根膜におけるマクロファ-ジと破骨細胞の関係を明らかにするために,実験的にラット上顎第一臼歯に矯正力を適用し,その際,圧迫側歯根膜に出現する単球,マクロファ-ジ,好中球,肥満細胞,前破骨細胞,破骨細胞を酵素組織化学的手法を用いて経時的・経日的に検索して以下の結論を得た。 1.酵素組織化学的所見 1)非特異的エステラ-ゼ活性の検出とNaFの阻害試験から単球とマクロファ-ジを確認し,また,特異的エステラ-ゼ活性の検出から好中球と肥満細胞を,さらにTRACP活性の検出を用いて前破骨細胞と破骨細胞を確認した後,形態的特徴からそれぞれの細胞を同定した。 2)単球およびマクロファ-ジは骨表面にはほとんど観察されず,歯根膜内の骨表面から離れた血管周囲に多く観察された。またマクロファ-ジは一部変性組織周囲にもみられた。単球は非常に少なく,非特異的エステラ-ゼ活性の検出される細胞の大部分はマクロファ-ジであった。好中球は実験期間1時間と12時間においてわずかに観察されたのみで,他の実験期間ではほとんど観察されなかった。肥満細胞は全ての実験期間で,ほとんど観察されなかった。 3)破骨細胞は圧迫側歯根膜の骨表面と変性組織周囲に限局し,前破骨細胞は骨表面に近接した血管周囲に観察された。 2.マクロファ-ジと破骨細胞の出現について 1)マクロファ-ジは12時間において最も多く出現するのに対して,破骨細胞は14日に多く出現し,経時的・経日的な出現傾向は異なることがわかった。また,両細胞の出現は2元配置分散分析から相関がなかった。 2)前破骨細胞の出現は少なかった。 以上の結果から、歯の移動の際の圧迫側歯根膜に出現するマクロファ-ジは破骨細胞の起源として直接的には関連はないこと、さらに好中球および肥満細胞の炎症性細胞の出現がほとんでないことが示唆された。
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