成人性歯周炎病変におけるメモリ-T細胞と活性化B細胞の頻度と分布を免疫組織学的に検索した。19の歯周炎バイオプシ-は歯周手術時に得られた。ほとんどの組織では臨床的に4mm以上の歯周ポケットが残存しており、表面上の炎症は弱かったが、多数の炎症性浸潤細胞が認められた。対照として矯正治療のための便宜抜去時ならびに智歯周囲炎の為に抜去を行ったときに臨床的に歯肉炎と診断された組織を得た。6μm厚さの連続凍結切片をそれぞれのバイオプシ-より作製し、アビヂンービオチンーペルオキシダ-ゼ法とアビヂンービオチンーアルカリフォスファタ-ゼ法またはアルカリフォスファタ-ゼー抗アルカリフォスファタ-ゼ法を組み合わせた二重染色法によるCD4+CD45RO+メモリ-T細胞、CD4+CD45RA+ナイ-ブT細胞、CD19+CD23+、CD19+CD25+活性化B細胞について検討した。切片を歯肉溝側1/3、結合組織中央部1/3、口腔上皮側1/3に分け、それぞれの領域の中で浸潤の強い場所を選び、0.04mm^2の範囲について陽性細胞の出現率を算定、解析した。その結果、歯周炎においてはいずれの場所においてもCD4+CD45RO+メモリ-T細胞の比率が有意に高く、CD4+CD45RA+ナイ-ブT細胞分の比率は低かった。一方、活性化B細胞は19の歯周炎組織のうち13で認められたが、B細胞にしめる活性化B細胞の比率にはバイオプシ-間で大きなバリエ-ションがあり、臨床指標との間に相関は認められなかった。歯肉炎組織ではCD4+CD45RO+メモリ-T細胞の比率は歯周炎組織よりも高かったが、B細胞ならびにB細胞に占める活性化B細胞の比率は歯周炎組織よりも低かった。これらのことは歯肉炎、歯周炎ともすでに活性化されたT細胞が浸潤していること、およびB細胞活性の違いはメモリ-T細胞の産生するサイトカインの違いによることが示唆された。
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