研究概要 |
純チタンおよびチタン合金は融点が約1700℃と非常に高く,凝固し易いため,歯科精密鋳造において種々の欠陥が生じ易い.これらの欠陥の発生を少なくするため,鋳型の温度,鋳造力の増強あるいはスプル-取り付け位置の変更など,さまざまな工夫をしている.それら鋳造の諸条件と,欠陥発生との関係には鋳型内の溶湯の動きが不可欠な情報である.本研究は標識元素溶解析により,鋳型内のチタン溶湯の流れを可視化して検討するところに特徴がある.本年度は上顎全部床の鋳造を想定し,厚さ0.45mmのシ-トワックスと市販のリテンションパタ-ンを用いてパタ-ンを作成した.通法により埋没,ワックス消却の後,チタン専用の遠心鋳造機を用いて鋳込んだ.スプル-は4条件とし,パタ-ン中央,およびパタ-ン中央から左右へ少しずらした場合,および中央で,回転方向とパタ-ン面が垂直の場合である.実験の結果スプル-断面積が10×1.4mm極めて小さいが,最後のスプル-タイプがほぼ100%の鋳込み率で,表面に欠陥が認められず,またX線欠陥検査の結果でも内部に欠陥が認められなかった.この場合は溶湯が最もスム-ズに流れていることが湯流れの観察から明らかになった.また最も鋳込み率の悪かったのは,スプル-から流れ込んだ溶湯がすぐに鋳壁にぶつかるタイプであって,鋳込み率が50%に達しなかった.また全体的に欠陥は表面に現れているタイプがほとんどで,内部欠陥はほとんど無かった.これは鋳型内部においても,溶湯に強力な遠心力や,コリオリの力が作用しているためと思われ,遠心鋳造機の場合はこのように外見的に欠陥が無ければ,ほぼ完全な鋳造体と考えて良いことを示している.
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