標識元素溶解法を応用すると鋳型内部のチタン溶湯の流れが明かとなり、これを用いることで鋳造欠陥の原因を解明することができる。 今年度の研究によって、スプルー取り付け条件を中心として欠陥と湯流れについて検討した。その結果、これまでは差圧鋳造と遠心鋳造の特徴を比較する場合、層流と乱流という流れに大きく影響する因子が必然的に関連し、しばしばその違いが不明瞭となった。今回は遠心鋳造の場合も特徴が鮮明となり、鋳造方式の如何を問わず、常に流速によって鋳込まれる部分と、圧力差によって鋳込まれる部分が存在することが明かとなった。それぞれの割合は、鋳型空洞の形態、鋳造方式、および層流か乱流かに依存する。たとえば比較的厚い板状空洞の場合は、流動抵抗が小さく圧力が解放されやすいため、差圧鋳造でもいったんスプルーから流出した溶湯は、流速が駆動力となり充満する。また、圧力鋳造で円柱状空洞に鋳込んだ場合にパイプ状になる現象も、一部溶湯が獲得した流速により、鋳型面に凝固層を形成しながら進んだ結果と解釈すれば、自然に理解される。逆に流動抵抗が大きいメッシュパターンのような場合は、スプルーから流出する時点の流速よりも、複雑な空洞内を進んでいる時に後ろから作用している圧力の大きさが重要である。丸穴メッシュパターンに遠心鋳造で鋳込み、しかも層流となった場合は、流速で鋳込まれ部分と圧力で鋳込まれた部分とがかなり明瞭に区別できる。このように差圧鋳造と遠心鋳造の湯回りを比較する場合、鋳型空洞の形態を常に考慮しつつ、流速が重要か圧力が重要かを検討すべきと思われる。
|