1.歯根膜細胞の至適培養条件:成犬臼歯から歯根膜を採取し、MEMにウシ胎児血清ないし自己血清を5、10、15、20%の各濃度で添加、培養し、細胞増殖速度とアルカリホスファターゼ(ALP)活性から至適条件を検討した。その結果、ウシ胎児血清では10%まで増殖速度が増加したが、自己血清では固体差が大きく一定の傾向は得られなかった。ALP活性は血清5%では発現しないが、10〜20%では、いずれの血清でも、培養5日目から現われ、約7日目でピークに達し、その発現率は10〜15%が最も高かった。以上から、10%ウシ胎児血清による培養法が本来の機能を維持し、かつ大量、安定に培養する上で最も妥当と考えられた。 2.人工歯根表面のコラーゲン固定化:アパタイト、チタン、ポリエチレンの各種人工歯根を作製し、その表面にコラーゲンの固定化を試みた。その結果、前2者では、いかなる方法でも固定化できなかった。また、ポリエチレンでは、固定化効率は分子量に依存し、低いものほど良く固定化されたことから、ポリエチレンの低密度化が必要とされた。 3.人工歯根に対する培養歯根膜細胞の付着:歯根膜細胞を採取後、上記の方法で3週間予備培養を行い、細胞増加を待って、人工歯根を培養液中に浸漬した。その結果、アパタイト、チタンでは、浸漬7日で、直径4mm、長さ8mmの人工歯根表面全体に細胞を付着させることができた。一方、コラーゲン固定化ポリエチレンは、密度が軽く、培養液中の静置が困難なことから、細胞を十分付着させることができなかった。 4.顎骨埋入実験:培養歯根膜細胞を表面全体に付着させたアパタイト人工歯根を成犬下顎骨に埋入した。その結果、埋入3か月で、感染、脱落例は1例もないが、X線的に歯根周囲の透過層は狭作し、歯根膜再生を示唆する所見は得られなかった。この点については、現在、細胞増殖因子、接着因子による培養法の改良と埋入法の検討を行っている。
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