研究概要 |
外来チトクロ-ムPー450遺伝子の導入発現[1] 異種生物由来の遺伝子発現による代謝系の修飾の試みとして,ウサギ肝臓のフェノバルビタ-ル誘導型チトクロ-ムPー450cDNA(CYP2C14)をタバコに導入した.まず,すでにいくつかの有用外来遺伝子の発現に用いられている二方向性のTRプロモ-タ-による発現の特異性について検討した.その結果,タバコ,カンゾウ,ジギタリス,ベラドンナなどの植物においてTRプロモ-タ-は篩部組織に特異的に発現し,傷害,オ-キシンの添加などの刺激により発現の増大することを明らかにした。[2]. TR2プロモ-タ-の支配下にウサギPー450cDNAをおいたキメラ遺伝子を構築しAgrobacteriumーpGV2260系によりトランスジェニックタバコを得た.ノ-ザン分析によってmRNAへの転写発現を確認し,組織化学的免疫染色によってこのPー450タンパクはすでに述べたTR2プロモ-タ-によって篩部組織に特異的に発現していることが示された.また,ウエスタンブロット分析によってPー450タンパクの発現が確認された形質転換体はsenescenceがはやいという特徴を有していた.これは,組織中のマロンジアルデヒド量の増加とクロロフィル量の減少によっても示された.次に形質転換体の二次代謝産物についてアルカロイド画分を調べたところ,senescenceの二次的効果のためと考えられるが,ニコチンの分解代謝物とおもわれる物質(propenylpyrrolidine)が特異的に集積していた.以上から間接的ながら代謝系の修飾という筋みが可能になったといえる.
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