研究概要 |
マウス乳癌由来FM3A細胞の細胞内αNTPプールが不均衡になるとDNA二本鎖切断が起き、100〜200kbpという特異的な大きさのDNA断片とapotosisに特有なヌクレオソーム単位(〜180bp)らラダー状DNA断片を生じ細胞は死に至る。我々は、この細胞死を、αNTP Imbalance Deathと名付けた。この細胞死はタンパク質合成阻害剤サイクロヘキシミドにより抑制される。さらにチミジル酸合成酵素阻害剤FUdRの作用によりαNTPプールが不均衡となったFM3A細胞のlysate中には、Controlの細胞には検出されないDNA二本鎖切断酵素(エンドヌクレアーゼ)が誘導され、この酵素がαNTP ImbalanceDeathに重要な役割を果たしていると考えられる。そこでαNTPプール不均衡時に誘導されるエンドヌクレアーゼの単離精製を行った。FM3A細胞にFUdR(1μM)を作用させ、この時誘導されるDNA二本鎖切断酵素の製精を行い性質を調べた。DNAを含むSDS-PAGEにより分子量45,000付近にDNA binding proteinとエンドヌクレアーゼが検出され、目的の酵素の分子量は45,000であることが明らかとなった。この精製したDNA二本鎖切断酵素は、至適pH6.0で二価金属イオンを要求せず10mM以下の低NaCl濃度で強い二本鎖切断活性を示した。この酵素は裸のファージDNAをランダムに二本鎖切断したが、ミニクロモソーム構造をとるSV40ゲノムDNAは切断しなかった。今回精製したエンドヌクレアーゼは従来知られている酵素とは全く異なる新しい酵素である。またFUdRは細胞をS期で停め細胞死を引き起こすことがすでに分かっており、この時生じるDNA断片の100〜200kbpのサイズは哺乳動物細胞のreplication unitとほぼ一致することから、このDNA二本鎖切断はS期の細胞のDNA複製開始点において、ほどけてむき出しとなった裸のDNAの部分を切断していると考えられる。
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