研究概要 |
神経細胞は,シナプス入力を受けると遺伝的に応答するように,その分化の過程でプログラムされていることが予想される。このシナプス伝達に対する神経細胞の遺伝的応答性が,哺乳動物の出生後の神経ネットワ-ク形成,さらには,記憶・学習過程において重要な役割を果たしている可能性がある。本年度は,このような観点からの研究を主に行った。合わせて,マウス大腿筋細胞への外来遺伝子導入系を検討した。 (1)培養神経細胞を用いた解析 マウス顆粒細胞ニュ-ロンの初代培養系に,グルタミン酸レセプタ-アゴニストを加えた所,TRE(TPAーresponsive element)とCRE(cAMPーvesponsive element)に対するDNA結合活性の上昇が認められた。この上昇は,特異的アンタゴンストによって阻害されることから,グルタミン酸レセプタ-特異的に引き起こされている。また,このDNA結合活性の上昇には,細胞外Ca^<11>の流入が引き金となっている。そして離,このCa^<11>流入量が,これらDNA結合活性の活性化の程度を規定しているらしい。さらに,TREとCREの結合活性の上昇は,同じDNA結合性復合体によって引き起されている。そして,Fos関連蛋白質を含むにも拘らず,その複合体のDNA結合体はCREに対するものの方がTREよりも高かった。 これとと別に,複数の神経伝達物質レセプタ-を通じて伝わった情報は,核内転写制御因子の発現誘導に相加的な効果を及ぼした。 (2)マウス大腿筋へのDNA直接注入による外来遺伝子の導入発現系プラスミドのDNAと共にフルクト-ズなどの種々の試薬溶液をマウス大腿筋に注入すると,導入遺伝子の発現が2ケ月以上にわたって認められた。また,EGTAなどの試薬を共存させると,その導入発現効果は著しく上昇した。
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