研究概要 |
木質化リグニンの多彩な生物活性が明らかになりつつあるが,不均一な構造をとるため構造決定が難しく作用メカニズムは不明であった。そこで,リグニンの前駆体のフェニルプロペノイド(pークマリン酸,フェルリン酸,カフェイン酸)を過酸化水素,ペルオキシダ-ゼの存在下で脱水素重合させたいわゆる合成リグニン(以下,DHPーpCA,DHpーFA,DHPーCAと略)を合成した。我々は即に,合成リグニンが天然リグニンと同様に,ミエロペルオキシダ-を多量に含む細胞,例えば,多形核白血球,単球やヒト前骨髄性白血病細胞HLー60のヨ-ド化を促進したり,MDCK細胞中でのインフルエンザウイルスのペラ-ク形成を阻害することを報告した。今回,抗ウイルス活性誘導のメカニズムについて以下の点を明らかにした。(1) 天然リグニン(PcーFr.VI)及び合成リグニン(DHPーFA)のベンゼン環部分を ^<125>Iで標識した。これらの標識サンプルをインフルエンザウイルスと混合し庶糖密度勾配遠心にapplyしたところ,約77%及び15%の放射能がウイルスに結合していた。又,MDCK,Lー929,Uー937細胞,血清成分との結合が確認された。PCーFrVIでウイルスを予め処理すると,ウイルス感染によるマウス致死効果が完全に消失した。マウスに,PcーFr.VIを前処理(po,i.p)しておくと,ウイルス感染に対する低抗性が若干生じた。リグニンが直接ウイルスを不活化する可能性,簡接的に抗ウイルス状態を誘導する可能性が示唆された。(2)合成リグニンは,エイズウイルス(HIVー1,HIVー2)のMTー4細胞変性効果,HIV抗原の発現を有意に抑制したが,リグニン前駆体には活性が検出されなかった。合成リグニンは,いずれもHIVー4細胞への結合を抑制したが,HIVプロウイルスの発現を抑制している可能性も残されている。(3)合成リグニンは,多形核白血球が産生するO^ー_2を強くscaoengeするが,ClO^-,一重項酵素の産生について現在検討中である。
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