研究課題/領域番号 |
03807153
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
岡村 富夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (70152337)
|
研究分担者 |
安屋敷 和秀 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10167968)
|
キーワード | レニン / アンジオテンシン / アンジオテンシン変換酵素 / レニン抗体 / 免疫組織化学 / 血管内皮 / レニン阻害薬 / ヒト血管 |
研究概要 |
平成4年度は、昨年度にラットで得られた血管壁レニンの存在をヒトで証明するために、手術時に得られたヒト摘出血管を用いてレニンの存在を生化学的ならびに免疫組織化学的に検討した。 1. 胃全摘術の際に同時に摘出された大網より非病的状態の胃大網動脈を分離した。患者はすべて正常血圧者であった。一本の動脈を二つに分け、一方の血管の内膜面を綿花で擦過することにより内皮除去標本を作成し、無処置の標本と比較した。各々のホモジネート中のアンジオテンシンI生成活性を測定し、ヒトのリコンビナントレニンに対して特異的なレニン抗体ならびにヒトレニンに選択的なレニン阻害薬(KRI-1314)の効果を比較した。過剰量のレニン抗体ならびにレニン阻害薬により抑制されたアンジオテンシンI生成活性はほぼ同じ値が得られ、この活性をレニン活性と考えた。その結果、無処置で内皮が正常な動脈標本中のレニン活性の方が内皮を除去した標本よりも有意に高値であった。 2. 上記の動脈を摘出後直ちに固定し、免疫組織化学的な方法でレニンの存在を検索した。その結果、ヒト胃大網動脈の内皮細胞に強い陽性染色が得られ、充分量のレニンを前もって加えた抗体では染色されなかった。 以上のことから、正常血圧者の非病的な状態の血管の内皮細胞にレニンが存在していることが明らかになった。このレニンが血中から取り込まれたものか、内皮細胞で合成されたものかは結論が得られなかったが、レニン基質が血管壁に存在する事実と考え合わせると、アンジオテンシンIが血管内皮が産生される可能性が明らかになった。従来より、高血圧や動脈硬化の発症、維持、伸展と血管内皮の関連が指摘されてきたが、血管壁レニンーアンジオテンシン系の面から考えても、血管内皮の重要性があらためて認識された。
|