病院の公衆衛生的機能発現の一つを地域ケアの提供として把え、その果たしている役割を知るため、Y市内の要援護老人関係の保健・医療・福祉の複数の機関(市・老人福祉係、保健予防課訪問看護担当係、社会福祉協議会および市内で訪問看護を行っている各医療機関、さらに管轄保健所)で把握もしくは訪問している在宅要援護老人(寝たきり・痴呆)に関して、各機関の重複度と各々のケア提供の内容について、老人の身体・精神状況との関係も含めて調査を行なった。 なお、Y市は南北に細長く、訪問看護を行っている病院は、中・南部のみにある。 その結果、以下の点が明らかになった。 1. 公的サービスには地域差がないが、民間3病院からの訪問看護は中部・南部に有意に多く、病院の所在地を反映していた。そのため、『自力で坐位不可』という同一のADLレベルでも、中・南部の人は訪問看護を受けれるが、北部の人は受けれないという偏りが生じていた。 2. 対象別に見ると、市・老人福祉係による寝たきり131人中、病院からの訪問看護を受けている人は30%だが、痴呆性老人60名中、病院は5%にすぎず、保健所保健婦の方で35%は把握してケアをしていた。 3. 各機関がケアしている対象の重なり具合を調べた処、福祉関係では1機関のみが過半数を占めた。逆に、訪問看護は医療機関からが6割、市の訪問看護で9割が他機関と重なり、多面的な援助を要していた。 4. 病院と市の訪問看護が重なっている4名では病院は気管カニューレ交換等の処置を、市は清拭等の身体面のケアに重点を置いていた。 以上のことから、医療機関は、それが身近に存在する人には有効であるが、地域偏在が生じるため、やはり公的サービスが行政全域をカバーする必要のあること、そのためには、個々のケア提供の能力も含めて、地域看護計画が立てられねばならないことが示唆された。
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