本研究の目的は、1.低血漿浸透圧ラットの系統を確立すること、2.浸透圧受容器を卵細胞に発現させることであった。目的1を達成するために、教室で飼育しているラットのコロニ-の中から、低い血漿浸透圧を示す個体どうしを交配して、今までに6世代までの交配を行った。その結果合計407匹の仔が生まれた。離乳直後に血漿浸透圧を測定して、各世代の中で正常な値を示すもの4匹と、低い値を示すもの4匹を残して、交配を繰り返した。407匹のラットの血漿浸透圧は、平均297mOsm/kgで、発現頻度をグラフに表したところ275ー280mOsm/kgにやや小さいピ-クを示すものの、ほぼ正規分布となり、明かな二つのピ-クは認められなかった。このラットのコロニ-は1991年の11月頃にマイコプラズマに感染してしまったために出生率が低下し、今後更に交配を続けるのが困難な状態である。 第2の目的のために、まず、アフリカツメガエルの卵細胞に、mRNAの情報を発現させ、卵細胞の膜電位を測定して、情報が発現したかどうかを判定する系の確立を目指した。ラットの肝臓から、acid guaniduim thiocyanateーphenolーchloroform法でRNAを抽出し、さらにoligotexーdTカラムを用いたアフィニティ-クロマトグラフィ-でmRNAを抽出した。このmRNAをマイクロピペットで卵に注入して、3ー5日後に膜電位を測定したところアンジオテンシンII、バゾプレッシンに反応して膜電位が変化する卵がみられた。そこで45匹のラットの脳の第3脳室前壁部(室傍核、視索上核を含む)を切り出して合計約1gの組織からmRNAを抽出して、同じように卵細胞に発現させて、NaClを追加して高張にしたRinger液に対する反応を調べた。現在までのところ、浸透圧刺激に反応する卵を見いだすことは出来なかった。今後はより多くの脳組織を集めてmRNAを抽出するか、より少量のmRNAで情報が発現する方法を検討したい。
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