バセドウ病と糖尿病は一般によく見られる自己免疫性内分泌疾患である。前者は甲状腺の機能亢進による甲状腺ホルモン過剰から甲状腺中毒症に、後者は膵B細胞機能低下によるインスリン不足により糖尿病になる。両者とも時には死にいたる重篤な疾患である。ともに自己免疫疾患であるが、その発症の分子機構は不明である。バセドウ病、糖尿病発症の分子機構-O_2産生-DNA損傷とそのシグナル伝達を明らかにすることを目的とした。 (1)(2)を明らかにすることを中心に研究を進めた。 (1)パセドウ病:甲状腺細胞増殖・分化の異常。免疫異常-O_2産生-DNA損傷-DNA修復過剰-増殖・分化の増大が起こり、バセドウ病=甲状腺細胞増殖・分化過剰になることを明かにする。 (2)糖尿病:膵B細胞機能低下。免疫異常-O_2産生-DNA損傷-膵B細胞機能低下-糖尿病になることを明らかにする。 初代培養甲状腺細胞、膵B細胞を用い、バセドウ病、糖尿病発症の分子機構-O_2産生-DNA損傷とそのシグナル伝達を明らかにしつつある。バセドウ病発症の分子機構に関しては結論は得られなかったが、糖尿病発症に関しては、催糖尿病薬アロキサン、ストレプトゾトシンが細胞内Caを増加し、O_2産生を増加し、DNA損傷-膵B細胞機能低下-糖尿病になることを明らかにした。また、高濃度ブドウ糖も、催糖尿病薬アロキサン、ストレプトゾトシンと同じように、O_2産生を増加し、DNA損傷-膵B細胞機能低下-糖尿病を引き起こすことを明らかにした。またこのDNA損傷にも細胞内Ca増加が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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