タンパク質分散液の動的粘弾性測定とその解析により得られる特性値(臨界濃度、架橋領域形成のためのセグメント数)と固有粘度の算出、そしてゲルの静的粘弾性測定での特性値(活性化エネルギー、自由体積分率)の算出と電子顕微鏡観察により、加熱形成ゲルと自発ゲルの構造とその形成メカニズムを検討した。そして、(1)加熱ゲルの架橋領域形成には疎水性相互作用の影響が大きく関与していること、(2)ゲル化が起こる際にはタンパク質分子が大きな占有体積を持つこと、(3)架橋領域は3〜4本のセグメントで形成されていること、(4)自発ゲルの架橋領域の形成にはSS/SH交換反応と水素結合が大きな役割を果たしていることを明らかにした。 分子ダイナミックスの観点からは、加熱ゲルも自発ゲルも本質的には同一の現象であり、タンパク質の周りの水の構造をどのように変化させるかでゲル化メカニズムを整理できるという結論を得た。自発的ゲル化はタンパク質の周りの結合水と自由水との中間の水の構造が乱され、中間水の層が薄くなり、タンパク質および結合水が自由水の早い攻撃に曝されるためにタンパク質分子が解膠し、ゲル化が起こると言えた。そして、タンパク質の水中での挙動という観点に立てば、自発ゲルはタンパク質分子の周りの水の構造を、化学的手段により乱しており、加熱ゲルでは、熱という物理的手段によって、この水の構造が乱されることにより起こる現象であり、このことが加熱ゲルも自発ゲルも本質的には同一のゲル化メカニズムを持つと言う結論である。
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