研究概要 |
本研究は養殖マガキの鮮度判定基準を確立し応用・実用化していくことを目的とする,マガキの鮮度の保持にはその代謝機能を維持し内部・外部環境の浄化(自浄作用)をすみやかに行うことが必須である.それらは繊毛運動の活動度に起因していることから,平成3年度は繊毛運動に着目し,その生理的特性を明らかにするとともに,その定量化に取り組み以下の成果を挙げることができたので報告する. マガキ繊毛運動の生理学的特性について検討した結果,マガキ繊毛の分布は消化器系内部,鰓表面,外套膜に多数観察され,各々の繊毛の機能は主として,食物の移送(消化器系,鰓)。ガス交換(鰓),海水・食物などの外部環境物質の出入(外套膜)であった.また外套膜の繊毛の方向性の違いが入水部,出水部の機能を果しており外套膜の繊毛運動の活動度測定には,乳滴の移動速度の測定が有効であ].また鰓繊毛運動能は,繊毛が一定方向に並んでいる特性を生かしてその切片を作成し、ガラス細管内の切片の移動速度を測定した.これらの速度は鮮度と正の相関関係が得られ現在その統計解析を試みている.この鰓切片繊毛運動能は1.7ー4.4%が至適塩分濃度で50%海水中(1.7%塩分濃度)以上での保存が最適である.また繊毛運動能の温度により影響は上昇に伴い増加するが,生存能(活動維持能)は指数関数的減少がみられた. つぎにミクロな視点による繊毛運動の解析を試みた.電子顕微鏡による形態の観察(9+2構造),電気泳動による解析(ダイニン腕はAα,Aβの双頭構造)によりダイニンーチュ-ブリンの相互作用の結果繊毛運動が引き起こされる(ダイニンATPaseがチュ-ブリンにより170ー140%活性化)ことを明らにした.またダイニンATPaseは塩分濃度,温度変化により活性化され,上記の生理学的特性の裏付けがなされた,以上計画通り基礎的研究を完了した.
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