研究概要 |
我が国で多食されている養殖のマガキは、生のままで食卓に供せられることが多い。そのため生産者から消費者までの流通段階における鮮度維持が特に問題となる食品である。養殖マガキのように『生きている』状態の食品の鮮度の判定は、従来の方法とは異なる生理学的特性に基づいた方法を確立する必要がある。本研究では幅広く応用・実用化し得る養殖マガキの鮮度判定方法を開発していくことを目的としている。 平成3・4年度の研究においては、繊毛運動能は外部環境に鋭敏に反応することを生理学的,生化学的基礎研究で明かにし、繊毛運動能が鮮度判定基準の指標として最適であることを実証した。マガキの鰓繊毛の運動能を分光学的に計測することからマガキの鮮度を定量化もしくは視覚化する方法を最終的に確立した。本法がマガキの鮮度を鋭敏に反応するかどうかの検討を行うために、鰓繊毛運動能を直接的にビデオ顕微鏡による画像解析を用いて検討したところ、分光学的測定法(メチレンブルーの還元退色反応による)との間にきわめて相関の高い結果を得た。 この方法は非常に簡便で比色するだけで容易に鮮度を判定でき市場での利用が期待されるため、平成5年度は実用化にむけて〓き身マガキの鮮度評価・検討を行った。その結果、〓き身カキの冷蔵保存5日目で約1/2,7日目では約1/4,10日目では約1/20にメチレンブルーの還元退色能が低下した。鰓切片の切除部位による差異は中央部が両端部の口腔および肛門部に比べ高い還元退色を示した。さらに実用化に向けて種々の検討を行った結果、幅広く市場で活用でき得る方法であることが判明した。以上研究の詳細については3年間の研究成果を取りまとめた刊行物による。
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