研究概要 |
養殖のマガキは、生産者から消費者までの流通段階における鮮度維持が特に問題となる食品である。そのために種々の検討がなされているが、カキ等いわゆる『生きている』状態の食品には鮮度恒数というものが適用できないことから別の視点から鮮度を判定する基準を設ける必要がある。 マガキは幼生から岩等に付着しそのまま一生を過ごすため、マガキは殻内環境の浄化・成育に、多量の海水の流入・流出を行って絶えず酸素や養分を殻内に送り込むシステムを必要としている。それらはすべて鰓や外套膜に密集している繊毛の活発な運動に依存していることがマガキの生理学的研究により判明した。それゆえ繊毛運動の活動度を測定することは、マガキの鮮度つまり『生きている』状態を数値化するのに最適であることに着目した。この繊毛運動に必須のATPはミトコンドリアから生成のため酸素消費量は増すことになり、その酸素消費量の測定により繊毛運動能すなわち細胞の活性度を推し量ることが可能であると考えられる。メチレンブルーという色素は酸素供給があると青色を呈し、還元されてロイコメチレンブルーという無色になることを利用して酸素遮断下に鰓切片を入れ分光光度計で還元による退色反応を測定し繊毛運動の活動度を視覚的にかつ定量化しようという試みを行った。ビデオ顕微鏡を導入して繊毛運動の画像解析による裏付けの結果、測定可能な範囲内においてムチ打ち回数の減少と保存日数,メチレンブルーの退色還元反応の3項目において極めて高い相関が得られた。以上のことにより、非常に簡便で汎用性の高いマガキ鰓の繊毛運動活動度を指標とする分光学的鮮度測定法を開発することができた。この方法を実用化させるために、市場に流通している剥き身カキで鮮度評価・検討を行った。あわせて鰓切片の切除部位,大きさ,マガキ固体の大きさの差異などによる影響についても検討を行った。その結果市場はもとより幅広く活用でき得ることが判明した。
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