研究概要 |
本研究は,大麦の有効利用の可能性に注目し,大麦中に存在する生理活性物質を検索し,その精製を行なうことを目的としている. 本年度に得られた研究結果は,まだ第一に,大麦穀粒の外側の分級粉に多くのタンパク質が存在し,水抽出でプロテア-ゼ活性が得られることであった. そこで,研究実施計画に示したごとく,プロテア-ゼの種類の確定とその精製を試みた. その結果,トリプシン活性やキモトリプシン活性よりは,アミノペプチダ-ゼ活性の強いことが認められた. また,硫安分別,疎水性クロマトグラフィ-,ゲルろ過クロマトグラフィ-,ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ-,イオン交換クロマトグラフィ-を用いて精製法を検討した結果,4種のアミノペプチダ-ゼの存在を認めた.それぞれの精製度合は,粗抽出画分に比べて,37倍(PーI),120倍(PーII),70倍(PーIII),154倍(Aー2)であった. 最もよく精製の進んだAー2は,活性の回収率も高く,基質としてのロイシン-パラ-ニトロアニリドに対しても小さなKm値(0.06mM)を示し,しかも広い範囲のpH領域で活性を示した. 以上の結果は,大麦穀粒中に,活性のつよいロイシンアミノペプチダ-ゼが存在していること,および,その精製が可能であることを示している. この事実は,1992年の日本農芸化学会大会および日本栄養・食糧学会総会で報告される.
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