本研究は、大麦の有効利用の可能性に注目し、大麦中に存在する生理活性物質を検索し、その精製を行うことを目的としている。 昨年度の研究により、大麦穀粒の外側の分級粉に多くのタンパク質が存在し、水抽出でプロテアーゼ活性がえられることが明らかとなった。そのプロテアーゼは、トリプシンやキモトリプシンタイプというよりはアミノペプチターゼタイプであった。また、各種のクロマトグラフィーにより若干の精製を試みた。 そこで、本年度の研究としては、昨年の実績を元に精製をより進めたことである。 オーストラリア産WEEAH種二条大麦の90-80%分級粉より酢酸緩衝液にてアミノペプチターゼを抽出し、40-60%飽和硫安分画を得た。次いで、疎水性クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーを用いて少なくとも4種のアミノペプチターゼが存在することを明らかにした。それぞれをA-1-I、A-1-II、A-1-III、A-2とした。A-1-Iについては更にゲルろ過クロマトグラフィーを行い、活性ピークとタンパク質ピークが一致した。それを最終標品(A-1-I-G)とした。 粗抽出液に対する比活性は、それぞれ64倍(A-1-I-G)、82倍(A-1-II)、70倍(A-1-III)、154倍(A-2)であった。A-1-I-GのSDSおよびDisc電気泳動では均一のバンドであった。A-1-IおよびA-2のKm値は0.138mM、0.060mMであった。いずれもpH6-8で活性を有していた。
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