平成3年度は科学研究費の援助を受けることができ、ニワトリ卵黄膜から2つの塩基性タンパク質・VMOI及びVMOIIを効率良く精製することができ、ほぼ当初の研究計画に従い下記の成果を得ることができた。 1.精製VMOIに対する各種プロテア-ゼ処理で得られたフラグメントをHPLCを用いて分取、精製し163個の全アミノ酸配列を決定し、二次構造の予測に成功した。CDスペクトルによる二次構造の解析結果からも、VMOIにはαーヘリックスは全く存在せず全βタイプの蛋白質で、70℃で変性して立体構造を失うが室温に戻すと巻き戻しがおこる等、これまでの蛋白質に無に新しいタイプの立体構造を持つ蛋白質であることが分かった。また、VMOIに対するモノクロナ-ル抗体を数個取得したので、現在その認識部位の解析を初めとした免疫学的解析に着手している。VMOIの糖転移反応活性についてはHPLCを用いて基質と生成物の解析を行なっている。特にNーアセチルグルコサミンの6量体を基質とした場合、重合度の高い糖を合成するが、その合成糖が難溶性のため分析方法を検討している。(これらの成果は、現在2報にまとめ投稿準備中。) 2.VMOIIについては、リゾチ-ムより更に塩基性が強く、14%のシステインを含み、αーヘリックス含量が少ない等の特徴的な構造を持つ蛋白質である。沈降平衡法から解析した分子量は6KDaで、4つのSーS結合を持ち熱安定性が高い等、トリプシンインヒビタ-様の性質をもつことが分かった。N末端から20個のアミノ酸配列を決定し既知蛋白質の相同性を調べた結果、新しい蛋白質であることが分かった(Biochem.J.印刷中). 平成4年は本研究を計画通り逐行し、2つの新しい蛋白質の構造解析、免疫学的解析、蛋白質機能についての成果をさらに2〜3報にまとめて報告の予定である。
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