1.Na^+_-ATPase分子が膜表在性のATPase触媒頭部(見かけの分子量;約330kDa)と膜内在性部分(恐らくNa^+とK^+との交換チャンネル)とから構成されていることを明らかにしており、すでにこのATPase触媒頭部は精製が済んでいる。それは72kDaのサブユニット(A)と53kDaのサブユニット(B)を主要サブユニットとして構成されている。各サブユニットのN末端アミノ酸配列及びそれらのトリプシン消化断片のアミノ酸配列をProtein sequenaterにより決定した。さらに適当なアミノ酸コドンの部分配列に対する合成oligonucleotideを調製し、それをプライマーとしてE.hiraeのgenomicDNAを鋳型にPolymerase chain reaction(PCR)法による本酵素遺伝子の部分増幅を行った。その結果、該当する大きさの産物(約1kb)が得られ、さらにその塩基配列を決定した結果まさしくV型ATPaseの特徴的一次構造を有していることがわかった。 2.E.coli系で作製したE.hiraeのgenomic library(約20-40kb fragment)に対してPCR増幅産物をプローブにcolonyhybridization法によりクローニングを行った結果、2個のpositive cloneを得た。そのうちの一つであるpKAZ1の塩基配列を決定した結果、このクローンにサブユニットAとBの両方がコードされていることがわかった。両サブユニットのアミノ酸配列は典型的なV型ATPaseの配列であり、Na^+_-ATPaseがV型ATPaseであることがここに証明された。従って連鎖球菌にはすでに報告のあるF型のH^+_-ATPaseとあわせて両型のATPaseが存在する最初の事例となり、ATPaseの進化を考える上で極めてユニークな発見と考えられる。
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