研究概要 |
Ser-52に結合した糖鎖の役割を調べる目的で、各種のグリコシダーゼを用いて、糖鎖をタンパク質から取り除くことを試みた。ウシIX因子から調製したペンタペプチドGlu-Ser-(Glc-Xyl-Xyl)-Asn-Pro-aminoethyl Cysに対してα-キシロシダーゼ、β-キシロシダーゼ、Ο-グリカナーゼを作用させたが、まったくオリゴ糖は、切断されなかった。従って、生体内では、今までに精製されていない新しいグリコシダーゼにより代謝されている可能性が高い。次に、大阪大学の楠本らとの共同研究を行ない、Glc-Xyl,Glc-Xyl-Xyl,Ser-Glc-Xyl,Ser-Glc-Xyl-Xylを合成した。そこで、これらの糖鎖の外因系凝固反応におよぼす効果を調べた。リン脂質、カルシウム、VII因子存在下、IXa因子によるX因子の活性化反応には、糖鎖はまったく影響しなかった。同様に、リン脂質、カルシウム、組織因子存在下、VIIa因子による因子活性化反応に対しても糖鎖の影響は見られなかった。これらのことから、このオリゴ糖が、外因系凝固反応に直接関与している可能性は低いことが示された。 次に、VII因子や、IX因子からオリゴ糖を取り除き、それらの機能解析をする必要があった。そこで、市販のグリコシダーゼを用いて、タンパク質分子から糖鎖を取り除くことを試みたが、これらの酵素は、まったく作用しなかった。 以上のように、これらの糖鎖は外因系凝固反応には、直接は作用しないことが示唆された。しかし、一方では、単離したオリゴ糖鎖を含むVIIのGla-EGFlドメインがVIIa-組織因子複合体のアミダーゼ活性を阻害することや、単離したウシIXEGFlどメインが、IX因子、VIII因子存在下で、X因子の活性化を阻害する結果が得られている。従って、EGFlドメインが、タンパク質分子間の相互認識に重要であることは明白であり、この糖鎖がEGFドメインのコンフォーメーションの安定化や外因系の代謝、あるいは、生合成の制御に関与している可能性もあり、今後の課題である
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