紫外線によるDNA損傷を認識している蛋白を同定する目的で、ゲルシフト法により紫外線照射DNAに特異的に結合する因子の同定を試みたところ、ショウジョウバエ胚細胞中に2種の因子(因子1及び因子2)をみいだした。これらを分離・精製し、その酵素活性を決めたところ、両因子はいずれも光回復酵素活性を持っている事が解った。因子2は、ピリミジンダイマーを光回復し、従来大腸菌や酵母等でよく知られているphotolyaseのホモログである事が解った。因子1は、(6-4)光産物を光回復する酵素である事を明らかにした。このような活性は未だかつて同定されておらず、全く新しいタイプの光回復酵素である。また、紫外線によるDNA損傷のなかで、(6-4)光産物は最も突然変異活発能が強い事が最近示され、紫外線発ガンの主要因である可能性が強くなった。この意味で、この(6-4)光産物を特異的に修復する酵素の発見は発ガン過程の解明に大きく寄子すると思われる。さらに我々は、サル・ヒト等の高等動物細胞において(6-4)光産物を特異的に認識する因子が存在する事を見い出している。今後は、ショウジョウバエの(6-4)光回復酵素のクローニングを行い、これら高等動物の(6-4)光産物結合因子との関連を明らかにし、紫外線誘発突然変異及び、紫外線活発発ガンにおけるこれらの因子の役割を明らかにする事をめざす。
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