フィードバックシステムの同定において、システムが最小位相性を持つことが必要であることを明らかにした。つまり、そのシステムを統計的に等価表現するイノベーションモデルに付随するRiccati方程式の特解の存在条件と結び付けることによりシステム同定が可能となることを明らかにした。この結果を具体的に述べると、BWRのような負のフィードバックループを持つ場合には核特性伝達関数が不安定になってもフィードバックによって炉は定常に運転できるが、最小位相性が破れることが明らかになった。したがって、この状況を知らずにシステムの同定を実行すれば誤った結論を引き出すことを指摘した。 さらに、最小位相性をもつフィードバックシステムにおいて同定自体は理論的に可能であっても、炉が臨界近傍で運転されておれば核特性伝達関数の零点の可逆の条件の成立が困難になる。ところが、零点の可逆性が困難になれば自己回帰モデルの偏差が漸近的に残ることが分かっている。したがって、システムの同定に従来の自己回帰モデルを用いる場合、零点の可逆が困難になれば自己回帰モデルの収束性が十分でなくなり、伝達関数の同定が困難になることを指摘した。 上述した2つの同定の解析において、モデル同定の数理構造を規定している基礎モデルはシステムに統計的に等価なイノベーションモデルであった。しかし、イノベーションモデルのモデル表現が一意的でないために、各種の表現が有り得る。そこで、諸イノベーションモデルの対応関係を明らかにした。さらに、各種イノベーションモデルの係数行列と関係するRiccati方程式の数理的性質を考察し、対応するRiccati方程式の特解間の関係とその特性を明らかにした。
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