都市群システムは、互いに有機的関連を有した都市の集合体を包括的に意味する概念である。都市の集合体は、混沌の状態で存在するのではなく一定の空間的秩序を有している。システムの要素である各都市は、互いにランダムに独立して成長・停滞・衰退するのではなく、他の都市に於けるそれらの動向と密接に関連し、相互に影響しあいながら変動する。本研究では、この概念をもとに、従来研究例の少なかった世界的規模での、国際的都市群システムの実態を地理学的に考察した。その目的は以下の3点であった。1)ある国の都市群と他の国の都市群とはどの程度相互に依存しあっているのであろうか。世界的規模では、都市群はどの様な連結体系を有しているのだろうか。2)導出された連結体系はいかなる要因によって形成されているのだろうか。各都市の属性とどの様な関係があるのだろうか。3)過去20年間に渡り、国際的都市群システムはどのように変動してきたのか。 本研究では特にアメリカ合衆国とカナダとの間の国際的都市群システムの相互依存関係について、航空旅客流動の起終点行列を用いて分析した。結節地域を設定してみると、合衆国都市群システムとカナダ都市群システムとは明確に分離する。また重力モデルによる相互依存関係度の測定の結果、国境が両国の相互作用に対してかなりの摩擦力として機能していることが分かった。従来より両システムの開放度の強さが指摘されてきたが、本分析によると両システムそれぞれの閉鎖度がかなり強いことが判明した。
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